OSA日記

旅と食と健康とメンタルと

四国遍路 5_5

最終日。

前回同様食事は6:00なので、5:30に起床する。予報では今日こそ雨が降りそうな感じだったが、今のところ良い天気だ。

下ノ加江から39番延光寺までは2つコースがあり、距離が近い方で言えば先日の真念庵から狼内集落を通る道になる。当初そのつもりだったが、宿の主人が言うには手前の県道21号線を行く方がアップダウンはなく、結果的には早いとのこと。地元の情報は尊重すべきだし、真念庵経由だと打戻りが長いので、ご主人の言に従うことにする。
6:40出発。

今日はかなり先まで自動販売機すらないとのことなのでコンビニで水を購入し、しばらく国道をさかのぼった後、川を渡って田んぼの中の道に入る。山から眩しい朝日が昇ってきて、天気予報とは裏腹に快晴である。

道はそのまま川に沿って山道に入っていくが、地図で見ると道は川の蛇行にあわせて激しく曲がりくねっている。なるほどこれを伸ばせば結構な距離になるに違いない。県道とはいえ車1台通るのがやっとの広さで交通量は皆無に等しく歩きやすいのだが、行けども行けども同じ景色。今回の遍路はこのようなパターンが多く、歩いていて精神的に疲れてしまう。

道端にはよく栗が落ちている

相当歩いたように感じてようやく土佐清水市から三原村に入るが、ここまで5キロくらいしか進んでいない。地図にある遍路小屋までは同じくらいの距離を歩いてやっとたどり着く。竹で出来た遍路小屋で休憩した後は下長谷の集落までやはり何の変化もなく、ここでようやく雑貨屋の前に自動販売機を発見し、冷たい水を購入。

もう少し行ったところにある天満宮でベンチがあったので大休止を取ることにする。なぜか馬が2匹しかいない壊れたメリーゴーランドが放置してあり、オブジェとして見たらなかなかいい味を出している。

壊れたメリーゴーランド

見たところ三原村の中心に近いはずだが、あたりは田んぼしかなくのどかなものだ。宮ノ川トンネルを抜けてもわずかな集落で、程なく村を抜けてしまうことになる。こんなところにも瀟洒な団地があり、そこを過ぎると遍路小屋がある。ここでも竹だけで作った質素な小屋で休憩すると、ひたすら県道21号に沿って下っていく。

竹でできた遍路小屋

宿毛市に入りダムサイトを通り過ぎるとだらだらした下りが続く。歩道もなくなり午後の日差しもきつく景色も代わり映えしないのでひたすら歩くのみ。それでもふと空を見ると雲の形がカニみたいで面白かったりする。

カニみたいな雲

だいぶ下ったところに建物があり、その影でお遍路が休んでいたので見ると、昨日のパワフルなご夫婦であった。向こうも気づいたので近づくと、マメが酷くて歩くのが辛いとのこと。用意していたマメ用のジェル絆創膏を差し上げると、お返しにお菓子と饅頭をいただいたが、郷里兵庫県は赤穂の塩味饅頭だった。いろいろなお話をしてから分かれるとまもなく集落に入っていき、やがて土佐くろしお鉄道平田駅に到着。

今回はここから帰途につくことになるが、39番はまだ2キロばかり先にある。駅の待合室で小休止した後出発し、しばらく国道を歩くと道が分かれ、田んぼの中の道を歩いていく。

横を荷物満載したスクーターが追い抜いていったが、運転している遍路姿のとっぽい感じのお兄さんが手をあげて挨拶してくれたので、こちらも慌てて杖を振り上げて応える。

14:30、とうとう土佐最後の札所である39番延光寺に到着。長い長い土佐もようやく終わりをつげ感無量、といきたかったが、団体が大音響で般若心経を唱えていて何となく興ざめ。

39番延光寺

納経を済ませるとベンチでゆっくり休み、土佐を打ちえ終えた喜びを静かにかみ締める。やがて横のベンチに先ほどのとっぽいお兄さんがやって来たので少し話をする。名古屋に程近い三重からスクーターで来ていて、今日帰らなければならないそうな。スクーターといっても90ccくらいだから相当きついような気もするが、いろいろアウトドアをされているそうで、結構スポーツマンらしいので大丈夫だろう。

今日は帰らなければならないので、列車の時刻を見計らって札所を出ることにする。山門で一礼して元の道を戻るが、夕日を浴びて金色に光る稲穂の間をのんびり歩いていると、旅の終わりという感情も加わってか、風景がとても美しく見える。

そこへスクーターのお兄さんがやってきて追い抜きざまに手を振ってくれたので、こちらも大きく振り返す。しばらくすると川の対岸の道を例のパワフルなご夫婦がやってきたので、こちらにも大きく手を振る。「お疲れ様~」「やっとここまで来られました~」「お気をつけて~」などと大声で声をかわしながらすれ違う。ここでもみんな一期一会だ。旅の終わりもあいまってなんとも言えない寂しさがこみ上げる。

15:40平田駅到着。今回の遍路はここで終了。今日は48000歩におよび、距離はおよそ34キロ。
きれいなトイレで旅装を解き、笠と杖をビニールで包んで俗世へ戻る。

今日は高知から夜行バスだがまだ時間がある。どこかで風呂に入りたいと思い調べてみると、中村と高知にそれらしいところがある。迷った末、結局特急列車で高知まで戻り、駅に程近いところの銭湯を探し当てると、これがまた昔ながらの銭湯で、桶は「ケロリン」が描いてありドライヤーは1回20円というレトロなところだった。さっぱりした後は駅前の居酒屋で無事に済んだ遍路旅に一人祝杯をあげ、夜行バスで名古屋へ向かう。

熟睡した翌日はそのまま出勤である。もはや旅の余韻に浸る余裕もなかった。