OSA日記

旅と食と健康とメンタルと

四国遍路 5_1

某年9月19日

7月に37番岩本寺を打ったおかげで、9月にできた5連休を全て使えば長かった土佐を打ち終えることが出来るのだが、前後に休みを取ることが出来なかったのでけっこうきついスケジュールとなる。

行程は考えたものの実行に移すかどうか迷っているうちに、夜行バスのチケット販売の期日が始まってしまった。連休はのんびり過ごすか、と考えた数日後、どうせ連休ですぐに満席だろうと何気なくネットの「発車オーライネット」を見てみると、行き帰りともにまだ席があるではないか。

反射的にバスの予約をしてしまったので出かけざるを得なくなってしまった。引き続き各地の宿を予約し準備完了。

9月18日、仕事から家に帰ると風呂に入り、支度してあった荷物を背負い、杖を持って疾風の如く家を出る。

今回の開始は前回の終了地点、38番岩本寺を擁する窪川で、当初名古屋から高知へ行き、そこから鉄道で窪川に向かうつもりだったが、調べてみると関西から宿毛行きという夜行バスを発見、途中窪川にも6時という好都合な時間に止まることが分かり、京都まで新幹線で行くことにした。やはりいろいろと調べると何かしら良い案に当たるものだ。

20:20京都着。バスは八条口から出発とのことだが場所がよく分からない。うろついてようやくたどり着いた出発場所には、今までみたいに立派な待合室があるわけではなく停留所があるだけ。

付近でウロウロしながら待つことになり、これなら始発にこだわらず大阪から乗ればよかったと、ようやく到着したバスに乗り込むと、臨時で3台に増便したためか車両は一般の観光用みたいで、席は4列でトイレもないとのこと。二重にがっかりし、満員のバスで座席隣のおっさんと密着しながら、21:00定刻に「しまんとブルーライナー」は出発。

それでも夜行バスには慣れてしまったのかそれなりに眠り、朝6時に前回終了場所の窪川駅に到着。この駅には立派なトイレがあることは分かっていたのでそこで準備し、充分にストレッチした後出発した。2ヶ月ぶりの遍路の始まりである。

天気はいいはずだが窪川はわりと高地にあるのか、町にモヤがかかっていてなんとなく薄暗い。そんな中を国道56号線に沿って進むが、こんな時間でも幹線道路だけあってすでに車が多い。

もやのかかった窪川

窮屈な姿勢で一晩寝たため、しばらく身体が本調子ではなかったが、1時間も歩くと次第に脚も慣れてきた。モヤも晴れてきて太陽が顔を出すとテンションが上がる。

小さい峠を越えると国道を逸れて遍路道に入る。突き当りにはごみ焼却場があるが、歴史の古い遍路道は看板の指示に従って扉を入り、焼却場の敷地の中を突っ切って山道に入って行く。

焼却場の中のへんろ道

道はいきなり石だらけの過酷なもので、結構な標高から下り一辺倒。特に国道のトンネルの上を越えたあとはかなり荒れてエグイ道で、早速悪路の洗礼を受ける。ようよう国道に出てバス停のベンチで小休止し、朝食がてらおにぎりをほおばる。

荒れたへんろ道

ここからはずっと国道で、山道のときはアスファルトが良いと思っていたが、こうも続くと山道が恋しくなる。道にめりはりがなく自分がどのあたりまで来たかがよくつかめない。車も多くてうるさく、日が高くなって気温が上がると汗も噴き出してくる。

体力も一気に減っていき、修行っぽくなってきたなと思っていると遍路小屋を発見、早速入って小休止。チョコレートバーを食べて元気を回復して出発し、引き続き延々と国道を歩く。

やがて右から土佐くろしお鉄道の線路が近づいてくると、伊与喜で国道を離れて遍路みちへ。この先の熊井の集落には明治時代に出来た旧道トンネルがある。熊井トンネルというこの隧道は総レンガ造りで、当時子供にレンガ1個一銭のお駄賃で運ばせて作ったものらしい。入ってみるとさすがに相当な年代もので歴史を感じる。

熊井トンネル

トンネルを出たところでコピーしていた地図を紛失したことに気づく。カメラを出した時などに落としたみたいだが、また物をなくしたと落ち込む反面、今日くらいは地図に頼らず行き当たりばったりで進んでみようという気にもなる。

昼前に土佐佐賀の町に入り、町中に「むうん」という変わった名の食堂を発見。入ってみると名前に反して和風のつくりで、から揚げ定食を頼むとカツオのたたきも付いてきた。いずれも美味。初日からまともな昼食にありつけたことを幸運に思いながら佐賀の町を抜けると、ここから太平洋に沿って進むことになる。

行き過ぎたばかりの台風の影響か太平洋の波はすさまじく、かなり高いところから見ていてもなかなかの迫力である。このあたりは土佐西南大規模公園という文字通り広大な公園になっていて気持ち良さそうなところだが、先を急ぐことにする。

太平洋の荒波

波の音をバックに歩いていくのは気持ちいいものだが、今日は快晴で午後の日差しが容赦なく照りつけ体力を奪って行く。豪快な波もずっと見ていると飽きてくるし、身体もバテ気味になってくる。

今日は身体が慣れていないうちから30キロ歩くのだから無理もないが、視線がうつむきがちになっていく。それでも止まらずに歩いて行くとゴールも近づくわけで、やがて井の岬を貫くトンネルを抜けると今日の目的地の大方に入る。15時30分、本日の宿であるホテルUに到着。

ここはホテルというだけあって、各部屋にベッドと風呂が付いている。純粋な遍路宿ではなさそうだがゆっくり出来そうだと部屋に入ると、窓の外はいきなり豪快な太平洋で驚いた。かつてこんなに海の見晴らしのいい部屋に泊まったことがあるだろうか。風呂も広々とした石造りで気持ちよかったし、食事も海のもの中心で旨く、幸先の良いことだと思う。

ホテルの窓からの太平洋

波の音を枕に就寝したのは21時。電気を切ったとたん意識がなかった。

この日の歩行は43300歩、30キロオーバーの距離だった。