OSA日記

旅と食と健康とメンタルと

四国遍路 5_3

3日目

この宿は朝食が6時と決まっているらしく、朝は5:30に起床。朝は早いが遍路中は早く寝るためか目覚ましが鳴る前に目が覚めてしまう。今日の行程は多少短いのでゆっくり出発しようと思っていたが、他の遍路はすでに出立の準備をしており、自分も遅れてはならじ、と7時には出発してしまった。

下ノ加江川を渡り国道を歩いていく。ほどなく太平洋に面した高台に出るが、今日も天気が良く、相変わらず太平洋は波が豪快だ。飽きることなく海を見ながら歩いていく。

前方にはこれから歩く予定の足摺方面が遠望できる。久百々(くもも)の集落を越えると歩道がなくなり歩きにくくなる。国道だけあって朝早くから結構な交通量で気を使うが、後で地図をよく見ると国道を避けて遍路道がいくつかあり、ことごとく入り損ねたらしい。

やがてまたまたサーファーの車が増えてきて大岐海岸に到着する。さすが太平洋、ここも有名なスポットのようで、サーファーが多いのは昨日の入野海岸と同じだ。

大岐海岸

道はここで「はまみち」と「おかみち」の2つに分かれる。「はまみち」は文字通り海岸沿いに進む道で、距離も短いのでこちらを通りたかったが、浜にかかっている木橋が満ち潮で沈んでしまっている。「はまみち」を歩く遍路は、裸足になって水の中を歩くのを楽しんでいるようだが、靴を脱いだり履いたり足を拭いたりが面倒なので、引き続き変哲もない国道を歩く「おかみち」を進んでいく。

海岸の尽きる辺りから遍路道があり海岸沿いに道を歩いていき、すぐに国道に合流するが、ここまで休憩するところが全くない。しばらく歩いたところで小学校があり、校門横の花壇の縁に腰掛けて小休止。

ここから旧道を以布利の集落へと下っていく。趣のある町に入ると港の近くにきれいなトイレと大きな休憩所があったので改めて大休止する。

休憩は、単にザックをおろして休むだけの小休止と、靴下まで脱いでくつろぐ大休止とがある(自分が勝手に決めた)。マメが出来るのを防ぐために靴下まで脱いで足を乾かすことは必要だが、これをやれるところはこのような休憩所しかないので、1日にそう何度もやれるものではない。だから余計に大休止は気持ちの良いものだ。

ゆっくり休んだあと道中に戻るが、遍路道は港を越えたあと海岸線に出る。明確な道はなく流木などを避けながら波打ち際の砂浜を歩いて行き、この先は磯しかないのではないか、と思われる辺りから山の方に小さな小径があり、ここを上っていくらしい。

これでも遍路道

古の遍路道というのは海とか山ばかりだったわけで、全行程が大体こんなワイルドな道だったのかと思うと、今の遍路道というのは楽なものなのだなと思う。

汗だくになって山道を登りきると県道に出る。ここは足摺半島の付け根にあたり、ここから東回りで海沿いに進んでいくことになる。主に県道を歩くがところどころ遍路道が存在する。

道としては県道の方がフラットで楽なのだが、「へんろみち」と書かれた手書きの看板を見るとつい足がそちらに向かう。

途中の窪津では鰹節工場があり、とてもいい匂いがする。いわしを天日干ししていて、誰もいないので1匹頂戴したく手を伸ばしかけるが、罰当たりなことだと思いとどまる。

窪津の集落を過ぎると遍路道はつづら折れの急な坂を上って行く。午後の日差しが容赦なく照り付けるのは連日同様で、晴天はありがたい反面、体力的にはきつい。それにしても海の色がきれいだ。沿岸は「真っ青」という表現がぴったりで、沖の方は黒ずんでいてこれが「黒潮」の由来なのかと思う。豪快な波も合わせていつまで眺めていても飽きない。

黒潮の由来の黒い海

津呂の集落には遍路小屋があり、ここでも靴を脱いで大休止。管理していると思しきおじさんが入ってきたので世間話をする。ここまできたら今日の目的地の足摺はもうすぐ・・・と思うのは昨日の真念庵のときと同じで、やはりなかなか到着しない。

津呂の遍路小屋

それでも標識の数字は見る度に減っていき、最後の遍路道を抜けるといきなり観光客だらけになり、38番金剛福寺に到着した。時刻は13:40。

一礼して山門をくぐり、久しぶりの参拝と納経を行う。札所間最長の約90キロを無事に歩き通すことが出来て感無量だ。

納経を済ませた後はゆっくり休もうと思ったがベンチが見当たらない。ここはやはり観光地なので、自分のような一部の歩き遍路は完全に浮いた存在のようだ。長距離をようようたどり着いたのに冷たい仕打ちだと思ったが、一般の観光客はあまりゆっくりしないので必要ないのかもしれない。やはり札所は辺鄙なところの方が良い。

わりと早く着いてしまったので宿に入るにはまだ早い。そこで白衣を脱ぎ菅笠を手に持ち、観光客モードになって展望台に向かうことにする。

足摺岬はそれこそ20年ぶりくらいで、多くの観光客に混じりながら激しい断崖を眺める。海はとてもきれいで、そういえば前に来た時にここで大きな海がめを見たことを思い出し、感慨に耽ける。

20年ぶりの足摺岬

灯台弘法大師由来の七不思議などを見た後、良い時間になったので本日の宿Aに向かう。

海に面した部屋は眺めが良いが、窓の外すぐに道があり観光客が多数闊歩しているので、うっかりカーテンが開けられない。時々カーテンの隙間からそっと夕暮れの海を眺めることにする。

風呂は広々として気持ちよいし、夕食はここも海の幸が豊富で大変に美味。今回もいい宿に当たったと思ったが、客は遍路より一般客が多いらしく、夜遅くまで大声の話し声やバタバタとした物音で何度も起こされる羽目になってしまった。遍路宿では考えられないことだが・・・

本日の歩行は約25キロ、38500歩であった。