OSA日記

旅と食と健康とメンタルと

四国遍路 4_6

最終日。今日も定刻6時起床。

6:30に朝食のテーブルにつき、昨日のベテラン遍路と一緒に食事をいただく。宿には他にも車遍路の客がいるそうだが、朝食は遅いらしくとうとう顔を合わせなかった。

7:15に準備を済ませて出発。宿のおばさんが広い道路に出るまで送ってくれ、見えなくなるまで手を振ってくれる。今回は今日が最後というのもありほろりとくる。

道は横浪半島に囲まれた静かな内海沿いに歩いて行くが、ずっとよかった天気もとうとう下り坂になり、空はどんよりと曇っている。天気予報では昼ころから一時雨と言っていたので、雨具が必要になるかもしれないが、昨日まで晴天に恵まれたので文句は言えまい。

内海沿いの道は平坦で歩きやすく、海も凪いでいて静かで、心にしみるような景色が続く。そして今日も人がいない。道も観光客は横浪ラインの方へ行くのか、車がほとんど通らない。

静かな内海

ちょっとした半島付け根の峠を越えると小学校があり、その手前に棚が置いてある。近づくと小石に細工したお地蔵様の手作りお守りが置いてあり、「お遍路さん、自由に持っていってください」とある。喜んでいただくことにし、「すみませんが10円入れてください」とあるのでわずかだが20円入れておく。もっと入れたかったが、残念ながら財布に小銭がなかった。

小学校の棚

しばらく歩くと、またまた半島を越えることになり道は登って行く。やがてトンネルが現れたが、歩道はなく照明も暗く、たまに車が来るとかなり恐怖だ。特にトンネル中央は照明がなく真っ暗で、ライトをつけずにやってきた車が非常に怖かった。

しばらくするととうとう雨がぱらついてきた。予報より少し早いなと思ったが、ぱらつく程度なので菅笠にビニールカバーを付けただけでしばらく様子を見る。菅笠は直射日光だけでなく小雨も十分しのいでくれるし、通気性が良く蒸れないので、かさばることを除けば本当に優秀な道具だ。

やがて横浪ラインが合流してくると、海は遠ざかり再び山中に上って行く。車の量が急に増え、上りつめたところにまたもやトンネル出現。歩道がなく照明が暗い状況は先ほどと同じだが、車も増え距離も長いので恐怖の度合いも高い。四国は歩き遍路の道にもこのようなトンネルが多いが、やはり歩く人が多いのだからもう少し何とかならないものだろうか。

恐怖のトンネル

恐怖のトンネルを抜けてしばらく歩き、道端に遍路小屋を発見。ここまで休憩するところがなかったので、かなりくたびれた。さっそく靴を脱いで休憩。この小屋にも毛布などが置いてあり、ノートには「泊まらせていただきました、ありがとう」などという記述があるので、野宿で続けているお遍路も多いようだ。

雨が小止みになったようなので出発してしばらくすると、前方に巨大な工場が現れてくる。須崎の住友セメントの工場だが、まるで要塞のような巨大な建造物で、今までの穏やかな景色からのギャップが激しい。

工場を横目に見ながら須崎の町に入って行く。幹線道路は車が渋滞しており、やはりGWだなと実感する。腹が減ってきたので店を探すが、これはというのがない。気になるのはやたらとある「鍋焼きラーメン」という看板で、須崎の名物らしいがどの店も非常に混んでいて入る気にならない。

やがてホームセンターの横に東屋を発見。また雨も降り出したのでここで休憩し、少し離れたところに弁当屋を見つけたので弁当を買ってきてそこで食べる。歩き旅にはこういう方が似合っているのかも知れない。

満腹になって出発し、しばらくすると番外霊場5番大善寺に到着。別格だが道沿いにあるので寄ってみるが、小高い山の上にありかなり急な石段である。横を見るとなんと簡易ケーブルカーまである。頑張って登るとさすがに展望は良く、須崎の町並みを眺めることができる。簡単に参拝し、ベンチで休憩しながらこの後の行程を考える。

大善寺のケーブルカー

今日は須崎発21:30の夜行バスをとってあり、時間はまだまだある。天気や体力によっては須崎で打ち終わるつもりだったが、このまま終わっても半日つぶさないといけない。言ってはなんだが須崎は何もない田舎町なので、過ごすところがない。雨は小康状態だし、脚にも問題ないのでもう少し進んで峠手前の安和までいくことにする。

須崎の町を抜け国道56号線と交わるところに道の駅があるが、このあたりは車が大変なことになっていた。名物でもあるのか車が殺到し、当然駐車場は満車で阿鼻叫喚の図になっている。

歩き遍路にとっては渋滞など彼岸のことなので、スルーして56号線に沿って歩く。国道は須崎を先頭にどこまでも渋滞しており車が長蛇の列になっている。急に現実に引き戻され、とても快適とはいえない道を山に向かって歩いて行く。

地図によるとこの先はトンネルが多く、いやな予感どおりトンネルの中まで車でいっぱいだ。排気ガスと騒音に満たされたトンネル内は歩き遍路にとって最悪の環境で、急な山道でも上る方がよほどましと言える。

渋滞は途切れないながらもトンネルを出ると景色は良く、山の合間から太平洋が望め、下には土讃線の線路が見える。

14:20終着地点に決めていたJR安和駅に到着。今回の遍路旅はここで終了とする。身体の状態が良好なだけに少々名残惜しいが、次回に期待しながら駅に向かう。

安和駅は短いホームと小さな屋根付きベンチだけの簡素な駅だが、駅は国道から少し離れたところにあり静かな上、目の前が太平洋の絶景でかなりいいところだった。

誰もいないし外からも見えないので、この駅でCW-Xを脱ぎ荷物をまとめる。菅笠と杖はビニールで包み、遍路から娑婆に戻ることにする。次の列車までたっぷり時間があるので、さっぱりとした後はベンチに座り、波の音をバックにすっかり天気の良くなった風景を眺めて旅の余韻に浸る。

駅で娑婆に戻る

最終日は歩行距離28キロで40,100歩。

この後列車で須崎に戻り、夜行バスで大阪、さらに近鉄で名古屋というルートで戻るが、この日から名古屋はずっと雨で、今回いかに天候に恵まれたか思い知らされることとなった。それにしてもいい遍路旅だった。天候も体調も、景色も宿も出会った人たちも。

今回歩いた総合計は150キロ、231,000歩におよび、修行の道場土佐も先が見えてきた。