OSA日記

旅と食と健康とメンタルと

四国遍路 9_4

5月2日

4日目

目が覚めて時計を見るとまだ3時半だ。外からは結構な強さで雨の音が聞こえてくる。今日が雨なのは覚悟しているが、これくらい強いとさすがに気が滅入る。そんな夢うつつ状態で5時まで布団の中。起きて準備して、6時から朝食。

昨日遅くに着いたのか、もうひと組のご夫婦がおられた。ご夫婦ふた組はこのまま高野山へと向かうとのことでバスに乗り、残りの単独行3名は雨の中1番を目指すことになる。サラさんは我々と違う大坂峠ルートなのでこれでお別れ。昨日カードいただいたので、裏にアルファベットで名前とアドレスを書いた納札をお渡し、お互いに「グッドラック」「お気をつけて」と、昨日同様逆の国の言葉でお別れする。

入念に準備し、スパッツとポンチョを装着してフル装備で7時前に出発。まだ薄暗い中、国道を進んでいく。道は急に綺麗になったり古いままだったりを繰り返すが、時折工事現場がある。いずれすべて綺麗になるのだろうが、歩く身としてはあまり面白くない。雨も強くなったり弱くなったりし、時折強い風が吹いてポンチョがめくれ上がったりして鬱陶しいが、一旦雨の中に身を置いてしまうと思ったほど不快でもない。濡れたって死ぬわけではないし、山と違って夕方には宿に着いて風呂に入れるのだからそれまで辛抱すればいいことだ。ただ閉口するのは、靴の中に雨が染み込んでずぶ濡れになるのと、スパッツが覆うのは膝下からなのでポンチョがめくれ上がると膝がもろに濡れてしまうこと。

スパッツは今まで使っていたのが寿命となり買い換えたのだが、せっかくなので靴紐まで覆うことのできるヒサシの付いたものにした。確かに靴の中まで水が染みてくるのは遅くなったが、最終的に靴中がビショビショになるのは同じだった。一方膝が濡れる件だが、ポンチョの裾をスパッツに押し込んだりしてみたがうまくいかない。歩きながらどうにかならないか考えて一計を案じた。持ち歩いている細引きで縛るという案で、どこかの軒先をお借りして準備する。適当な長さに紐を切り、ポンチョの裾をひねってそこに紐をくくりつけ、紐のもう片方をスパッツから出ているゴムひもに括りつけるのである。長さを調整することでうまくいった。
隙間ができるのは仕方なく全く濡れないわけではないが、風で捲れ上がることもなく首尾は上々である。ただ、ポンチョを脱ぐときにいちいち紐を解かないといけなくなるが・・・。

そんな状態で歩き続け、県道2号への分岐を過ぎると「徳島県」の看板を通過する。とうとう発心の道場阿波へと戻ってきたわけだ。その先の広場にあった自転車置き場の屋根の下で立ったまま休憩。コースは南下して10番札所を目指す。道はまっすぐで先がよく見えるが、やがて先に出発した同宿のおじさんを捉えた。先行してしばらくすると、岩野トンネル手前にバス停と屋根付き休憩所があり、ここでようやくザックを下ろして休憩する。

阿波の国に戻る

おじさんが追いついてきてお互い雨についてボヤいたりする。今は雨が小康状態なのでゆっくり歩いているらしいが、それでもこのままのペースで行けば宿に早く着きすぎてしまうという。今日の行程は今回でも長い方なのだが、雨なので早足になるのと立ち寄るところがないので、考えていたよりハイペースで進んでしまっている。今晩もこのおじさんと同宿なのだが、電話して聞いてみたところ13時以降なら入れるとのこと。それくらいならと安心するが、早く着きすぎて困るというのも考えてみたら変な話だ。

一息いれておじさんより一足先に出発。雨が再び強くなってきた。「犬墓(いぬのはか)」という変わった地名をすぎ、道は県道から逸れて細い道に入る。集落の中を抜けていくが、雨は強さを保ったままだし景色は面白くないし、まさに苦行である。それでも歩を進めて高速道路の下をくぐると左折して東進する。

やはり景色は変わらないし、雨に加えて風まで強くなってくるし、靴の中の気持ち悪さは限界だし、悶々としながら歩いていると、思わぬところに建物があり、中に椅子などがある。よく見ると猿田彦大神と幟が上がっているので、ここで休憩させていただくことにする。猿田彦大神の像に一礼しベンチに腰掛ける。靴下とインソールを用意していた予備のものに換えると生き返ったような気分だ。どうせ早く着いてもしかたないのでここで時間をかけて休憩することにする。

休憩して息を吹き返す

やがておじさんが追いついてきて、私が休んでいるのを見て「いいとこがあるなぁ」と言いながら建物に入ってきた。次に9番法輪寺まで行って休憩しようと思うと言うと、おじさんはそれだったらここでゆっくり休んで行くという。しばらく雨の景色を眺めながら休憩。建物の中からだと雨の景色も情緒があっていいが、これからこの中に出ていかなければならないとなると話は別だ。勇気を出して再び雨の中を出発。

歩きながら考えるが、確かにおじさんの言うとおりで、もともと1番のお礼参りまで途中の札所には寄らないつもりだったが、9番は平地にある札所で確か屋根付きの休憩所もあったので寄ろうと思っていただけで、思いがけず良いところで休憩できたし、このペースなら宿には14時くらいになると踏んだので、このまま進んで行くことにした。

道はやがて10番切幡寺への登り口の交差点に着く。この景色には見覚えがあり、少し上に5年前に入ったうどん屋もある。懐かしく思いながら通過して先を急ぐ。雨はますます強くなり、せっかく換えた靴下も既にずぶ濡れだ。懐かしい景色も眺めている余裕もなくうつむき加減で歩く。時々屋根やヒサシを見つけて雨宿りするのが関の山だ。

懐かしいうどん屋

切幡寺からは順路と逆に歩くので、道しるべの矢印が反対を向いているのが新鮮だ。逆打ちというのはこんな感じなのだろうなと思って歩いていると、ぼちぼち歩き遍路とすれ違う。すれ違う時つい杖の先を見てしまうが、皆新しいので遍路を始めたところなのだろうか。

法輪寺への分岐は直進し、分岐点にあるお遍路休憩所でこれまた立ったまま一息入れる。ひたすらまっすぐな道を進み、8番熊谷寺のこれまた見覚えのある山門を眺めながら通過。結局景色も雨足も変わらぬまま、今日の宿である7番十楽寺に到着。13:50でだいたい予想通りだった。

十楽寺の宿坊は遍路をはじめて最初に泊まった宿で大変懐かしい。山門をくぐり宿坊に入る前に休憩所で雨具を解き、受付へ。相変わらずビジネスホテル顔負けの宿だが、受付の方は優しく、雨の中頑張って歩いてきたことを労ってくれる。受付をしてカードキーを受け取ってエレベーターで部屋にあがる。

前知識なしで入ると100%宿坊とは思えないツインのベッドがある部屋に入ると、早速靴下を脱ぐ。ずぶ濡れの靴下を脱ぐだけですでに極楽の気分である。雨具等は干し、靴には貰った新聞紙を丸めて詰め込み、同じ階にあるコインランドリーで洗濯。16時30分から風呂に入れるとのことで、前回入らなかった大風呂に入ると広々とした湯船にはジェットのスイッチまであった。

ビジネスホテル顔負けの宿坊

食事は17時30分から。向かいには例のおじさんがいて、我々以外は団体だったのでおじさんと話し込む。いずれにしてもこんな雨のなかよく頑張ったが、テレビを見ると東海や関東では大雨となっているので、まだこの程度の雨でよかったと思う。

本日の歩行は37、000歩、27キロ。