OSA日記

旅と食と健康とメンタルと

四国遍路 8_3

11月5日

3日目

5:30起床。今日の行程も迷ったが、ちょうど良い所に宿がないのと難関突破の翌日なのとで、あえて短めのコースにした。結果的に正解だったのは、今日が1日中雨だったということだ。天気予報では曇りのち雨とのことだったが、どうせ朝から雨なのだろうと思っていたら、果たして本当に起きたときから雨が降っていた。予想は悪い方に当たるものだが、本格的な雨は室戸以来だ。

6:30に朝食をいただくが、同宿の人たちの半数はすでに準備を終えて出立するところだった。ご主人から昼ご飯にとおにぎりをいただきありがたい。7:00、久々に雨具を装着して出発。宿のご夫婦が雨の中道路まで見送ってくれる。

道は平坦で里山の中を進んでいくが、朝早いのと雨なのとで薄暗く、どうしても気分が沈みがちになる。雨はそんなに強くないが、雨具はポンチョとスパッツのみなので靴やズボンの一部が次第に湿ってくる。

うつむきながら歩いていると休憩小屋があり、普段ならこんな短距離では通過するのだが、いきなり小休止。雨の日は屋根が本当にありがたい。屋根の下から改めて眺めると雨の風景も悪くない。問題はその中に進んでいくことだけである。気分が乗らないまま歩くこと約1時間。

雨の中の休憩所はありがたい

8時過ぎに67番大興寺に到着。道がいったん下り、山門をくぐった後同じだけ石段を登っていくので、最初から水平に入ればいいのにと、小さなことで理不尽な愚痴を思い浮かべてしまう。それでも山門の先には巨大なカヤの木があり、雨ならではの幽玄な雰囲気ではある。

境内に上がると全く人気がなく、残念ながら休憩所もないので、鐘つき堂の屋根の下に荷物を置いて読経する。しばらくしてA屋で同宿のご夫婦が現れ、本堂の軒先で休憩がてら立ち話する。雨は次第に強くなってきたが先へ行くしかない。30分ほどしてからご夫婦より先に出発。

特に代わり映えのしない景色だが、雨が強くなって次第に靴の中が濡れてくる。靴は軽量で風通しの良いトレイルランニングシューズなので晴れている日はいいが、雨の日は水がそのままダイレクトに滲みてくる。ゴアテックスの靴ならいいのだろうが、こちらは晴れた日には蒸れて仕方ない。何か良い靴はないだろうか。

今日は急いでも仕方ないし、昨日の後遺症か少々足が痛いのでゆっくり歩く。少し軒を見つけては休んだりしていると、先ほどのご夫婦に先行されてしまう。その背中を見ながら歩き、やがて観音寺の市街に入ると交通量も増えてくる。線路を越え財田川の河口付近を橋で越え、琴弾神社の横を通ると68番神恵院に到着。ここはもう一つの札所69番観音寺も同じ境内に同居しており、一度に2箇所打つことが出来るお得な札所である。山門には両方の名前が書いてある。

一つの山門に二つの札所(見にくいけど)

ということで、ここでは4回読経することになるが、納経は一度に2ページ記入してくれる。神恵院はコンクリート造りの近代的な本堂だが、観音寺は室町時代建立の重要文化財で対照的である。境内には屋根付きの舞台のようなものがあり、荷物を置いてゆっくり休憩出来る。同宿のご夫婦2組も一緒に休んでいる。

靴を脱いですっかり濡れてしまった靴下を少しでも乾かすことにする。実はこの札所の裏には有名な寛永通宝の砂絵「銭形」があり、余裕があれば見に行こうかと思っていたのだが、雨だし展望台まで登らないといけないしで、やめることにした。観光は遍路を終えてからにしよう。

雨は強くなったり弱くなったりで、腰に根が生えたようになかなか出立する気にならず、少し早いがA屋でいただいたおにぎりを食べることにする。シンプルな梅干しのおにぎりは大変に美味であった。

12:00に出発。結局1時間くらいゆっくりしてしまった。雨足はまた強くなっているが、篠突く雨の中、観音寺の町を抜けていく。ある赤信号で待っていると、いきなり自転車のおじさんから「本山寺?」と聞かれる。次の札所なので当然とばかり返事をすると、「これ持って行き」と、なぜかキュウリを2本渡された。ご自分の畑でとれたものらしく曲がりくねっているが、お接待で野菜は初めていただいた。持っていても仕方ないのでそのままかじりながら歩く。

2本のキュウリをかじり、財田川を渡り終えた頃、今度はスクーターのおじさんから話しかけられる。おじさんは次の橋までは350m、3つめの橋を越えた頃から本山寺五重塔が見える、などとこれからの道のりを懇切丁寧に教えてくれ、最後にさっき取ったばかりというイチジクをくれた。イチジクも歩きながらむさぼり食う。

しばらく土手沿いに歩いていくと、三たび別の自転車のおじさんに、「昼飯食べた?」と唐突に聞かれる。先ほどおにぎりを食べたと言うと、この先の橋の向こうの袂にあるうどん屋が旨いと薦めてくれる。このおじさんも月の半分くらいはそこで昼飯を食べるらしい。その後も話しながら進むが、このおじさんも以前は歩き遍路をしていたそうで、73歳のときに51日で回ったらしい。おじさんと分かれて例の橋まで行くと対岸に件のうどん屋が見えるが、駐車場は車で一杯で確かに旨い店のようだ。さすがにうどんはパス。

遠くに次の札所が見える

そのまま土手道を進んでいくとスクーターおじさんの言った通り遠くに五重塔が見えてくる。道はやがて歩行者専用となり、予讃本線の下をくぐってしばらく行くと、70番本山寺に到着。ここは敷地は広いが建物が閑散としていて、今度も屋根付きの休憩所がない。ざっと見渡し護摩堂の軒下にスペースがあったので荷物を置いて読経。だいぶ雨の中にも慣れてきた。

閑散とはしているが遠くからも見える五重塔は立派なものだ。護摩堂の廊下に腰掛けて休んでいると、三度例のご夫婦がやってきたので世間話。このご夫婦は要所では鉄道やタクシーなどを利用しているそうで、それでも出会う私のことを速い速いとほめてくれる。

護摩堂の軒下で休憩

14:00出発、と、準備していると愛用のタオルがないことに気づく。境内を見直したがなかったところを見るともっと前に落としたらしい。最近は一度遍路に出る度に何かしら落としている。前回はバンダナでその前は手ぬぐい・・・。布ものは落としても音がしないので仕方ないが、布とはいえ愛用のモノをなくすのは口惜しい。今回はたかがタオルだが、モンベルの速乾性のもので、1000円もしたものなのでなおのこと悔しい。

出発するが雨はやむ気配もないし国道沿いは車が多いし、モノは失くすし、意気消沈しながら歩く。うつむきながら歩いていたせいか道案内を見過ごして道を間違えるし、踏んだり蹴ったりだ。

道はやがて国道から旧道に入り、少しほっとして先を進む。ここも讃岐街道とよく似た景色でやはり退屈な道だ。今日の行程は短いので早く着くかと思ったが、各地でゆっくりしすぎたせいでほどほどの時間となり、15:30今夜の宿のH旅館に到着。小さな町にある旅館だが、入ってみると思ったより大きな建物だ。濡れたポンチョを隣の物干しにかけ、脱いだ靴には新聞紙を貰って丸めて突っ込み、部屋に上がる。風呂にはすぐ入れるし洗濯は無料だし、ここも良い宿だ。

今夜の宿

今日の宿泊客は私ともう一人だけとのことだが、そのもう一人が随分遅く到着したので、夕食は広い食堂で私一人だった。メニューは魚ありトンカツありで旨かった。夕食後タオルを分けてもらえないかとお願いすると、快く名前入りのものを無料で分けていただいた。このタオルはその後失くすことはなく、今も家にある。

本日の歩行は38,500歩、約24キロ。雨には降られたが平坦な道ばかりで、前日のリハビリにちょうどよかった。