OSA日記

旅と食と健康とメンタルと

ひょう疽

高校生の時に、足の爪を切っていて、親指を深爪してしまった。それも両方。

これまでも何度かやったことはあるが、今回は少々深かった模様。するとしばらくして、歩くとつま先が痛くなってきて、赤く腫れてきた。消毒などしてみたが酷くなる一方だったので、市民病院に行くことにした。この時は、この後に起こる不幸な出来事など知る由もなかった。

診察した先生はしばらくじっと患部を見ていたが、こちらには何も言わず看護師さんに「爪切り」と一言。やってきた爪切りはニッパーのような格好をしていたが、いきなり爪を切りはじめた。それもかなり深い目に。

爪は3分の1くらい切られ、激痛が走って思わず痛たたた、と叫び声をあげたが、構う様子もなく最後まで切って爪を剥がされる。
痛ーーーー!てなもんだが、情け容赦なく、「根っこが残っているな」と言ってピンセットで根本を引き抜いた。この時の激痛は筆舌に尽くしがたい。あんなに痛い思いをしたのは生まれて初めてだったが、情け容赦なく片方の足も・・・

その後消毒や包帯をしてもらったと思うが、余りの痛さに呆然としてよく覚えていない。

その後様子を見せに何度か通うと腫れは引いていて、痛みもなくなったが、麻酔を打つとかせめて一言何か言ってくれれば、と恨み節。戸惑っているうちに一気にやった方がいいと考えられたのかもしれない。

治ってやれやれと思ったのも束の間、爪が伸びてくると、また同じ症状になってしまった。もう一度病院に行ったが、果たして同じ目に。

爪が伸びてくる度にこんな思いをしていては身が持たないので、先生に完治する方法はないかと尋ねたが、慣れてくるしかないねぇ、と。いつになったら慣れるのか、と絶望して帰ったことを覚えている。

高校は卒業し、進学した大学が九州だったので一人暮らしをするようになったが、果たして爪が伸びてくるとあの悪夢が。不用意に指をぶつけると、10秒後くらいにじわじわ痛みがやってきて、激痛がしばらく続く。消毒して包帯を巻くが白い膿も出てくる。

近くに国立病院があったので診察に行くと、やはり爪を切らないとダメのようだが、ここは麻酔を打ってくれたのであの激痛を味わうことはなかった。

がしかし、爪が伸びてくる度に同じことの繰り返し。病院では爪を半分取ったり全部取ったりしたが、一向に完治する気配がない。

4年間それを繰り返してきたが、ほとほといやになった。指が取り替えられないものかと真剣に考えたくらいだ。

卒業して地元に戻ったが、やはり爪が伸びてくると腫れてきたので、仕方なく市民病院へ。すると新しい治療方法があるとのことで、わらにもすがる思いで受けてみることにした。

これまでは診療室で施術していたが、今回は手術室に連れていかれて本格的な手術台に載せられ、看護師が何人もいるような本格的な術式になり、かなりびびった。

この術式は爪を切った後上と下を縫うといった感じのものだったが、麻酔が切れてくるとこれまでにない痛みに襲われた。敏感な指の先を縫ったからかどうかわからないが、とても歩けないので車いすを借りて親に迎えに来てもらう事態に。車いすでも廊下の段差の度に激痛が走り、ほうほうの体で家に帰った後、布団の上で動けなくなった。

この術式で治ったかどうかわからない。というのは自分で技を編み出したからである。

技といってもたいしたことはないが、なぜこうなるのかをよくよく考えてみた結果、爪さえ皮膚に食い込まなければいいのではないかということに気づいた。そこで爪が伸びてくると小さく切ったガーゼを先の尖ったピンセットで、爪と皮膚の間に押し込むという原始的な方法を試してみた。

治りたい一心で、風呂上がりに毎日欠かさずこれを行っていたが、爪が伸びてくると見事に治った。爪さえ伸びてしまえばこちらのもので、何でこんな単純なことに気付かなかったのだろうか。失われた10年を返してほしいくらいだ。

それ以来足の爪は角を長く伸ばしていて、その後この症状は起こらず、誠に重畳なことだ。

いろいろ経験をしたので、人に語れるくらいになってしまったが、アドバイスをひとつ。
ひょう疽は巻き爪が原因になることが多いそうだ。巻き爪はあまり歩かない人になりやすいそうなので、巻き爪で悩んでいる方はよく歩いた方がいいと思う。