OSA日記

旅と食と健康とメンタルと

四国遍路 4_5

5月3日

5日目。朝は定刻6:00に起き、朝食は前日仕入れていた惣菜やおにぎりを部屋でいただく。食べ終えた後、出立の準備をして部屋を出る。天気予報ではさすがに天気が下り坂と言っていたが、今のところ空は晴れている。

K旅館のおばあさんはとても親切で、35番や36番への行き方も詳細に書かれた手書きの地図(やはり包装紙の裏)で教えてくれる。

地図はたいへん詳細に作成されており路地の数まで書いてある。おばあさんは地図にマーカーで印をしながら丁寧に説明してくれる。
説明が終わった後も話が尽きず、こちらも楽しく話していて気がつけばそのまま30分も立ち話をしている。

35番札所は27番同様、高岡市街まで打ち戻ってこないといけないので、宿に重いザックは置いていけばいい、宿は常に空けているので自分がいなくても勝手に入って持って行けばいいと言ってくれたので、そのとおりにすることにして身軽になって出発した。ちなみに宿代は3000円で、素泊まりとはいえ安かった。

教えられたとおり高岡の市街を抜け、やがて田園地帯に入ると、高速道路の向こうの山の中腹に目指す札所が見える。見たところけっこう高いところまで登っていかなければならないようで、やがて車道と別れ遍路道に入ったとたんかなりな角度の急坂である。

下はコンクリートのスロープ状で階段にはなっていないので、雨が降ったりしたら滑り落ちそうだ。息を切らせながら登っていると眼下に車道が見えるが、車道も半端なく狭いので離合できない車で渋滞している。

35番への急坂

角度が急なだけに、ほどなく35番清滝寺の仁王門に到着するが、ここは車道からは来られないので人がいない。32番とは逆で小気味が良い。

石段を登って境内に入る。参拝して納経した後、高く登ってきただけあって展望のいいベンチで休憩していると、下の方から車が離合できずあちこちで誘導している声が聞こえる。

しばらく休んでしてから出発、同じ道を下っていくことになるが、角度が角度なので膝にダメージがこないように恐る恐る降りていく。

麓まで下り切り、行きとは逆に田園地帯から高岡の町に入っていく。町では通りがかりのおばあさんが「どこから?」と声をかけてくれる。「名古屋からです」「気をつけて」といった他愛のない会話が疲れを癒してくれる。本当に少し身体が軽くなるから不思議だ。

同じコースを通ってK旅館に入ると、まだおばあさんがいたので断ってからザックを背負う。で、そのままなんとなくまた話が始まり、気がついたらザックを背負ったまままた30分近く経っていた。

いつまでも話をしていたい雰囲気だったが、名残惜しみながら出発。おばあさんは私が見えなくなるまで見送ってくれた。

手書きの地図にしたがって次の札所を目指す。今まで身軽だったのでザックを背負うと改めて重さが肩に食い込む。散々軽量化を目指しているのになんでこんなに重くなるのだろう。

ザックの重さに耐えながら町を抜け南下して行くと、この先は海にもかかわらずその手前に山が立ちはだかっていて、この先は塚地峠が待ち構えている。トンネルで抜ける車道もあるが、足の調子もいいので遍路道を通りたい。

峠の直前に休憩所があったのでひとまず立ち寄ると、自転車の人が先に休憩していて挨拶する。四方山話をしていると、もう一人、折りたたみ自転車に大荷物を背負ったおばさんが汗をかきながら到着した。

話してみると尻が痛くて困っていて何とかならないかと相談され、二人でいろいろとアドバイスする。まずザックを背負ったまま座らないほうがいいのだが、ザックを積むところがないので、二人してなんとかいろいろな工夫を考えてみる。

この方はご夫婦で遍路されていて、旦那さんは歩きだが奥さんは足を痛めてしまったので、急遽現地で自転車を購入して旅を続けているらしい。50歳は越えていそうな人なのにテントで野宿だとのことで、たいしたものだと思いながら、こちらは一足先に出発。

塚地峠はいきなり上りが続き、息を切らせながらも登っていく。峠と覚しきところに到着すると、海とこれから渡る宇佐大橋が望める。下りは上りに比べると緩やかで、渓流に沿って進んで行き、やがて宇佐の町に入る。

塚地峠への上り

町に入ったもののあちこちで工事していて道があいまいになっており、すぐに出るはずの海になかなか出られない。それでも方向さえ間違えなければ問題ないわけで、ほどなく本土と横浪半島をつなぐ宇佐大橋の袂に出た。

今日の宿はここからほど近いS荘で、予約の電話の時も36番を打つなら先に来て荷物を置いていけばいいと言われたので、お言葉どおり先に宿に寄ることにする。入り口に着いたと同時に軽トラックがやってきて、ここの女将さんだった。荷物を預け、お茶とお菓子をいただいてから宿を出発。

先ほどの宇佐大橋を渡っていくが、この橋ができるまでは渡し舟しかなかったそうで、その方が遍路らしいがやはり橋の方がありがたい。海を越えるのでけっこう高くまで上っていき、高所恐怖症の身としては少しく怖い。

宇佐大橋

砂浜で遊ぶたくさんの人たちを見下ろしながら橋を渡り終えると、道は海に沿ってうねうねと続く。宇佐から36番までは3キロあまりなので、まもなく入り口に着く。最初予約しようとした宿があったがかなり大きい施設でどうも団体御用達のような雰囲気だったので、S荘にして正解だった。

道をそれて山の方に向かっていき、まもなく今回最後の札所である36番青龍寺に到着。寺は平地にあるが、山門をくぐってはるか石段の上に本堂があるので、最後もやはり延々と登っていくことになった。

36番本堂への石段

息を切らして上っていき参拝すると、今度は膝をかばいながらゆっくりと下り、納経をする。まだ明日はあるが、今回の納経はこれで終わりかと思うと少しさびしい。まだ時間が早いのでベンチに腰掛けて存分に札所の雰囲気を味わう。

14:15出発。ここからのコースは2つあり、このまま進んで横浪半島を縦断するコースと、今回選んだ内海沿いに進むコースである。前者は半島の背骨部分を進むため展望がよく、時折見える太平洋と断崖絶壁が豪快なコースである。ただし高低差が激しいうえ自動車の往来が多く、以前に車で通ったこともあるので却下。そもそも観光に来たわけではないので景色がよくても仕方ない。

一方後者は穏やかな内海沿いで平坦だし、本来の遍路道はこちらなので、この道沿いにあるS荘を予約し、打ち戻ることにしたわけだ。おかげで同じ道を打ち戻るのは今回で4回目、打ち戻りにはもう慣れてしまった。

再び宇佐大橋を渡っていると、塚地峠手前で会った折りたたみ自転車のおばさんが追いついてきた。いろいろ工夫してだいぶ楽になったとのことで、今日はこの先で旦那さんと合流し、食料を仕入れてテント泊とのこと。

自転車で先行していくおばさんを見送り、橋を渡り終えると宇佐の町に入り、やがてS荘に戻る。きれいで清潔な部屋で一服し、しばらくして風呂の用意ができたとのこと。洗濯はおばさんがやってくれるし、とてもいい宿だ。

食事では歩き遍路の方と同席だったが、この人もベテランでもう5回目だとのこと。しかもそのうち2回は逆打ち(さかうち)で、逆に回っていく難易度の高いコースをとったらしい。いろいろとお話を伺って道や宿の情報を得る。

1番からまわるのではなく、空海出生の善通寺から始めているとのこと。もう65歳だそうだが、今回出会った人たちはみんなパワフルだ。ちなみにこの方、1年の半分は警備の仕事で旅の資金を貯めているそうで、年金は生活費なので手をつけないとのこと。こんな人生もいいなと思う。

今回最後の一晩を満喫し、すっかり定刻となってしまった21時に就寝。
本日の歩行距離は21キロ、35,100歩だった。